CMSの移行は、技術的な作業が完璧に進んでも結果が惨事になりうる、数少ない種類のプロジェクトです。サイトは予定どおり公開され、見た目もよくなり、表示も速くなる。それなのにトラフィックは半分に落ちます。数百本のアドレスが形を変えたのに、その対応表を誰も作らなかったからです。
失われたトラフィックの原因は、新しいプラットフォームではありません。原因は断絶です。以前は応答していたアドレスが応答しなくなり、識別できていたページが新しいページのように見えてしまい、古いアドレスにひもづいて何年もかけて積み上がってきた履歴が、行き場を失います。しかも順位はある日いきなり落ちるのではなく、数週間かけて静かに沈んでいくため、公開当日に問題がないように見えたことは何の保証にもなりません。
結果を決める判断はひとつだけです。URL構造を維持しますか。 維持するなら、移行の大半はコンテンツとテンプレートの作業であり、リスクは限定的です。維持しないなら、変わったアドレスのすべてに、それぞれ対応する具体的な移動先へのリダイレクトが必要になります。その対応表がどこまで漏れなく作られているかが、移行が誰にも気づかれずに済むか、それとも高くつくかを決めます。アドレスが変わったのに何となくうまくいく、という第三の選択肢は存在しません。
CMS移行で実際に壊れるもの
URL。これが最大の項目です。プラットフォームごとに、パス、ページ送り、カテゴリ、日付の扱いに関する流儀が違い、新しいプラットフォームの初期設定をそのまま受け入れた瞬間に、サイト上のすべてのアドレスが黙って書き換えられます。スラッグの区切りがひとつ変わるだけ、日付の一片が付くか外れるかだけで、サイト全体が別のアドレス体系へ移ってしまいます。
メタデータ。 何年もかけて書き足してきたタイトルとディスクリプションは、書き出しの過程で失われることが少なくありません。新しいプラットフォームは、それをテンプレートから自動生成して埋めてしまいます。ページそのものは問題なく見えるため、見落としやすいのが厄介なところです。
構造化データ。 古いプラットフォームでプラグインが付けていたマークアップは、そのプラグインと一緒に消えます。新しい環境の同等機能が、まったく同じ出力を返すことはめったにありません。AI検索エンジンがスキーマのマークアップをどう読むかの解説で、何が生き残らなければならないかを整理しています。
内部リンク。 本文に埋め込まれた古いパスへの絶対リンクは、移行後もそのパスを指し続けます。アドレスが変わった後では、そのリンクの一本一本が、よくてリダイレクトを一回はさんで到達する形になり、悪ければ自社サイトの中で存在しないページに突き当たります。
画像とメディア。 保存先のパスが変わり、ファイル名が変わり、古いデータベースの中だけに存在していた代替テキストは、書き出しに含まれていません。
プラグインが肩代わりしていたことすべて。 何年もかけて設定してきたリダイレクト、正規URLの規則、フィードの形式、そしてチェックボックスひとつだったために誰も文書に残さなかった機能です。
これらをすべて、移行の後ではなく前に棚卸ししてください。古いプラットフォームが黙って肩代わりしてくれていたことの一覧は、いつでも想像より長くなります。
リダイレクトマップがすべてを決める
アドレスが変わるのであれば、最終的に意味を持つ成果物はこれひとつです。そして、ほぼ完成ではなく、完成でなければなりません。
元になる一覧は、一か所ではなく複数の場所から集めてください。稼働中のサイトをクロールすれば、リンクでつながっているものが出てきます。アクセス解析とサーチコンソールは、トラフィックはあるのにどこからもリンクされていない孤立したページを拾い出します。サーバーログは、外部のサイトが張ったリンク経由の分も含めて、実際に要求されているものを示します。どれか一つの情報源だけでは必ず取りこぼしが出て、しかも取りこぼされるのは決まって、古くてリンクが集まっているページの側です。
古いアドレスの一本ごとに、それに対応する具体的な新しいアドレスを割り当ててください。トップページでもカテゴリページでもありません。元の要求に答えていない場所へのリダイレクトはソフトエラーとして扱われ、渡される価値はごくわずかだからです。Google のサイト移転に関するドキュメントが、期待される対応付けを示しています。本当に対応するものが存在しないのなら、見つからないという応答を返すほうが誠実で、誤解を招くリダイレクトよりましです。
恒久的なリダイレクトを使い、古いアドレスを最終的な到達先へ直接向けることで、連鎖を一回に保ってください。そしてリダイレクトの規則は上から順に評価されるため、広いパターンを具体的な規則の上に置くと、その具体的な規則は飲み込まれて働かなくなります。
そのうえで、公開前に対応表を検証します。抜き取りではなく、一覧の全件に対してです。どのアドレスがどの状態コードでどこに着地したかを記録しておくと、公開後の突き合わせがずっと楽になります。
切り替える前に
古いサイトをクロールして保存してください。 すべてのアドレスについて、タイトル、ディスクリプション、正規URL、ステータスコード、語数をそろえた完全な記録です。これが比較の基準線であり、事が済んだ後からは二度と作れません。
コンテンツを書き出して検証してください。 書き出しが最後まで走ったという事実ではなく、件数を数えます。カテゴリの欠落、カスタムフィールドの脱落、記事本文の途中切れは、どれもよく起こり、どれも音を立てずに起こります。
遮断した環境で構築してください。 インデックスされてしまうステージングサイトは、サイト全体の複製を世に出すことになり、これは元々解こうとしていた問題より重い問題です。
新しいテンプレートが、古いテンプレートと同じものを出力しているか確認してください。 タイトル、ディスクリプション、正規URL、構造化データ、そして複数言語を運用しているならhreflangまで含めてです。多言語SEOの解説で扱っています。
実施時期を決めてください。 最も忙しい時期の直前は避け、金曜日も避けます。切り替えた直後に、まるまる注意を向けられる営業日が数日ほしいからです。しかもそれは、見ているだけの人員ではなく、その場で公開して直せる人員でなければ意味がありません。
切り替えた後に
最初の四十八時間は、その後の一か月より重みがあります。直せる誤りがまだ安く済む時間帯だからです。
サーバーログで、見つからないという応答を監視してください。対応表が取りこぼしたアドレスを見つける最速の手段であり、しかもあなたの想定ではなく、実際の要求から見つけてくれます。新しいサイトマップを送信し、クロールが本当に起きているかどうかを、そうだろうと決めつけずに確認してください。
基準線のクロール結果と突き合わせます。以前インデックスされていたアドレスは、いまは応答するか、具体的な場所へリダイレクトされるかのどちらかであるはずです。そのどちらでもないものは穴であり、恒久的な順位の損失に変わる前にふさぐ価値があります。
落ち込みは織り込んでおいてください。うまく実施した移行でも、数週間程度の変動は正常です。新しいアドレスは改めてクロールされ、改めて評価され直す必要があるからです。正常でないのは、回復しないまま続く下降で、その原因はほぼ例外なく、抜け落ちたリダイレクトか、どこか一般的な場所へ向けられたリダイレクトにたどり着きます。
リダイレクトは恒久的に残してください。これは移行期間の暫定措置ではなく、何年も積み上がったリンクといまのページをつなぐ唯一のものです。一年後に外せば、当初の損失がそっくりそのまま再現されます。
Mecanikはこの種の移行をWebサイト開発の一環として請け負っています。型はいつも同じです。プラットフォームの入れ替えそのものは定型の作業であり、良い結果と悪い結果を分けるのは、ひとえに対応表がどこまで漏れなく作られているかです。
よくある質問
CMSを移行するとトラフィックが落ちるのはなぜですか? ほとんどの場合、アドレスが変わったのにリダイレクトの対応表が不完全だったからです。古いアドレスが応答しなくなると、何年もかけて積み上がったリンクとクロールの履歴に行き場がなくなります。損失を招くのはプラットフォームそのものではなく、古いアドレスと新しいアドレスの間にできた断絶のほうです。
CMSを変えるときURL構造は維持すべきですか? 可能なら維持してください。構造を維持すれば、移行はリスクの限られたコンテンツとテンプレートの作業に収まります。構造を変えるなら、変わったアドレスのすべてに、それぞれ対応する具体的な移動先へのリダイレクトが必要になり、その割り当てがどこまで漏れなく作られているかが、移行が気づかれずに済むか高くつくかを決めます。
リダイレクトすべきアドレスの一覧はどこから集めますか? 複数の情報源から集めます。どれか一つでは必ず取りこぼしが出るからです。稼働中のサイトのクロールはリンクでつながったページを、アクセス解析とサーチコンソールはトラフィックはあるが孤立している可能性のあるページを、サーバーログは外部リンク経由も含めて実際に要求されているものを見つけます。一つの情報源で漏れるのは、たいていリンクの集まった古いページです。
古いページをトップページへリダイレクトしてもよいですか? いけません。元の要求に答えていない場所へのリダイレクトはソフトエラーとして扱われ、渡される価値はごくわずかです。古いアドレスの一本ごとに対応する具体的な移動先を割り当て、本当に対応するものがない場合は、見つからないという応答を返すほうが、誤解を招くリダイレクトより誠実で役に立ちます。
移行のリダイレクトはどれくらい残すべきですか? 恒久的に残してください。これは暫定措置ではなく、何年も積み上がった外部からのリンクといまのページをつなぐ唯一の接続です。一年後に外せば、移行で避けようとしていたはずのトラフィックの損失が、そのまま再現されます。
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